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家族信託とは、文字通り家族を信じて託すという意味で、家族への財産管理の委託や遺産の承継をする制度です。この「家族」には血縁関係がなくとも、親子同然の他人やと遠戚など、家族のような付き合いのある人も含まれています。
正式名称は民事信託といいます。
2007年に84年ぶりに信託法が改正され、一般の人が受託者になることができる民事信託・家族信託が世に出されました。(民事信託と家族信託は同じ意味です)
超高齢社会を迎える日本では、認知症患者数が増加し、認知症になった後の財産管理をどうするのかが社会問題にもなっています。
2019年に厚生労働省が発表した「認知症施策の総合的な推進について」によると、2025年には認知症患者が約700万人に上り、65歳以上の約5人に1人が認知症という世の中になるとされています。
他人に財産管理を任せて運用を行ってもらう方法としては投資信託などがありますが、家族信託は財産管理のための報酬が発生しない家族間での利用が想定されているという特徴があります。
目的や管理方法の取り決めをした上で信託をするため、その取り決めに準じて受託者は管理運用する義務を負います。
遺言書の作成や後見制度の利用に代えて、あるいは合わせて利用することで、本人の希望(認知症対策・老後の生活資金・介護費など)に沿った財産管理や遺産の承継が可能になります。
家族信託は、委託者・受託者・受益者の3者が当事者となります。
委託者は信託財産の管理・処分権限を受託者に与えます。具体的には高齢の父母や祖父母であることが多いです。
受託者は運用・処分・管理などによる利益を受益者に渡します。
受益者は委託者本人でも構いませんし、委託者以外の個人や法人、複数人でも将来生まれる予定の子でも問題はありません。
委託者と受益者は同一人物にしてスタートさせることが多いようです。
①認知症等の病気リスクに備える必要が出てきたため
認知症になってからでは、相続対策はできません。
認知症を発症すると判断能力がないとみなされ、基本的に法律に関する行為ができないことになります。
信託契約で定めた信託財産の管理権限は受託者に移転しますので、委託者が認知症等で判断能力を失っても信託財産は凍結を免れます。家族信託が「認知症対策」と言われる所以です。
②成年後見制度に限界を感じるため
成年後見制度は、本人の財産を守り、本人の安全な生活を確保する良い制度ですが、以下のような問題点があります。
・後見人による財産管理は、裁判所の監督下での財産保全が求められるため、本人の理想通りに活用しづらいという面がある。
居住用不動産の売却や、大きな金額の振り込みなどでは、裁判所の許可が必要です。
・後見監督人が選任された場合の後見監督人の負担がずっと続く。
・自宅売却時には正式な許可審判書が必要になる。
・資産の組み換え(遊休不動産の開発、老朽化した賃貸物件の建て替え、不動産の買い替え、借り入れによるアパートの建設など)ができない。
・選任手続きに時間がかかる。
・親族以外の人が後見人に就任した場合には、毎月の報酬支払いが必要になる。
成年後見人の業務は、本人が判断能力を取り戻すか亡くなるまで続きます。
家庭裁判所が選ぶ成年後見人の7割は専門職という統計が出ています。
③委託者と受託者が同じであれば、財産権の移動がなく、課税の問題が生じない。
①受託者を誰にするのかが難しい。
受託者は、本人が心から信頼できる人で、本人よりもなるべく若い方を受託者に選ぶことがベストです。
②受託者に多少の不安がある場合は、信託監督人をつけるという対処法があります。例えば、受益者が未成年や高齢者である場合など、受益者が受託者を自ら監督することが難しい場合に利用します。
③信託財産の名義は、受託者名義になる。
受託者の管理権限が及ぶのは、信託財産のみとなりますので、信託財産としなかった財産は、それまで通りに委託者が自分の財産として管理します。
④受託者の負担が大きい。
受託者の責任は、原則として「無限責任」とされています。無限責任とは、信託から生じた債務について、信託財産から支払えない場合には受託者個人の財産から支払わなければならないという責任を言います。
受託者になるということは、委託者の債務について保証人になることと同じです。
⑤受託者が扱えるのは、あくまで信託された財産に限ります。
⑥遺言書を作成した後、その内容と抵触する家族信託をした場合、その抵触部分については遺言を撤回したものとみなされます。
⑦未成年者は受託者になることはできません。
⑧家族信託の手続きを自分ですることは法的に可能です。ただし、お勧めしません。
受益者連続型信託を利用すれば、自分が死んだ後の相続だけでなく、その後の相続についても受益者を指定することができます。
受益権の承継は、回数に制限は有りません。
ただし、信託契約の設定から30年が経過すると、その経過後の代替わりについては1代限りについてしか信託契約を定めることができませんので注意が必要です。
30年の期間経過時に誰が受益者となっているかがわからないため、必要に応じて新たに信託契約を結び直すことも選択肢です。
●贈与税
贈与税は、他人から財産の贈与を受けた場合に、その贈与を受けた人に課税される税金です。
家族信託で贈与税を課税される人は、受益者になります。
委託者と受益者が同一人であれば、贈与税は課税されません。委託者から受益者に贈与が行われたことにはならないからです。
本来、贈与税とは、贈与によって利益を受ける人に課税される税金です。
自益信託の形をとれば、贈与税はかかりませんが、他益信託では贈与税がかかる場合があるので注意が必要です。
受益権を贈与すると贈与税が課税されます。
●譲渡所得税
信託による形式的譲渡で委託者に利益が発生するわけではありませんので、課税されません。
受益権を売却すると、旧受益者に対して譲渡所得税が課税されます。
●譲渡取得税
受益者には不動産取得税は課税されません。
●登録免許税
登記申請の場合に、登録免許税を納めます。
信託の登録免許税は原則0.4%ですが、土地については0.3%の軽減措置があります。
●不動産取得税
信託の開始時において、不動産の所有者である親が「委託者と受益者を兼ねる」形をとっている場合は、受託者の名義変更をしても、不動産取得税・贈与税・登録免許税はかかりません。
信託の終了によって不動産を取得した場合は、その時点で不動産取得税が課税されます。ただし、当初の委託者又は委託者から相続した人が不動産を引き継ぐ場合は非課税です。
●固定資産税
家族信託をすると、不動産の名義人は受託者になりますから、固定資産税の納税通知書は受託者のもとに届き、受託者が納付します。ただし、固定資産税・都市計画税などは信託財産の管理費用になるため、信託財産から払うことができます。
●所得税
受益者が信託財産の運用時に、信託財産から受け取る利益には、所得税が課税されます。
家族信託の契約手続きを行うには、トラブルを防ぐためにも公正証書を作成する方法が一般的です。
①「家族信託」の目的を、相続人となる家族や親族と話し合い、明確にする。
②家族信託を設計する。
中途半端な知識で行うことは、非常に危険なので専門家に依頼すべきです。
・家族信託を実施する目的。
・管理を任せたい財産の内訳。
③必要書類をそろえる。
④契約書を作成する。
財産の内訳や信託の内容などをまとめた信託契約書を作成します。
作成した契約書は、公証役場で公正証書にしておきます。
⑤信託財産を受託者に名義変更する。
⑥信託財産専用の銀行口座を開設する。
家族信託が開始すると、受託者は「分別管理義務」を負います。
金銭を信託する場合、「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」という信託専用の口座を開設することが推奨されています。
⑦信託登記の手続きをする。
不動産を信託した場合、その不動産を受託者の名義にする登記手続きを行います。
⑧建物の火災保険等の契約者の変更手続きをする。
⑨不動産管理会社への連絡又は賃借人への振込先変更通知の発送
⑩公共料金や固定資産税等の引き落とし口座の変更
⑪帳簿の作成
受託者は、信託の開始後は、帳簿を作成する義務が課されています。
⑫毎年1月31日までに税務署へ、昨年分の「信託計算書」「計算書合計表」の提出
ただし、信託財産に帰せられる収益額が3万円以下となる場合は提出は不要です。
⑬信託契約の終了時
終了のタイミングと終わり方は家族信託の開始時に設計します。
・信託財産の状況を把握
・未払い債務及び諸経費の支払い
・債権の取り立て
・信託財産の中に不動産がある場合は、残余財産帰属権利者等に引き渡します。
・受託者は、信託が終了した日の属する月の翌月末日までに、信託財産の種類・所在場所・価額等を記載した調書及び合計表を税務署に提出します。
■信託期間
原則として、信託契約の制限はありませんので、実務上は委託者の考える信託目的に応じて、信託期間を設定することになります。
受益者連続型信託を利用すれば、当初の受益者の死亡後の受益者を指定することができます。
受益者連続型信託の場合は、信託の設定から30年を経過した後、引き継がれる受益権の取得は一度しか認められず、30年経過後に受益者となっている人が死亡した時点で、信託は終了することになっています。
この口座は法律上必須とされているものではありませんが、受託者における分別管理義務(※)を徹底するために、開設するケースが多いです。
受託者が死亡した場合であっても凍結しない、受託者が破産などをした場合であっても影響を受けないなど、特殊な機能を有する口座です。
ただし、現実には、「信託口口座」の開設に応じてくれる金融機関はまだ多くありません(年々対応する金融機関は増えています)。
近辺に対応可能な金融機関がない場合は、受託者名義の通常の預金口座を新たに解説し、その口座で信託された金銭を管理することで、分別管理の義務を果たす方法が考えられます。(ご相談ください)
※分別管理義務:受託者の「固有財産」と「信託財産」を分けて管理しなければならないという義務。
●口座開設に必要な書類
金融機関ごとに用意するものは異なりますので、事前に確認が必要です。一般的な例です。
①家族信託契約公正証書
②受託者の本人確認書類
銀行によっては委託者や受益者についても必要とする場合があります。
③銀行の届出印に使用する印鑑(受託者の印鑑)
②口座を開設しようとする金融機関に打診する。
信託口口座に対応している銀行は、地方には少ないという現状があります。
金融機関では、一定の条件を満たすものでなければならないという基準を設けています。
委託者から受託者に一定額以上の金融資産を預け入れることを条件にしている場合もあります。
信託口口座を開設する手順も金融機関によって異なります。
③金融機関と信託契約の内容について話し合う。
必要書類の確認。
④信託契約書の原稿を作成。
金融機関の審査を受ける。
⑤信託契約書を公正証書にする。
公証役場、委託者、受託者が1通ずつ保管します。
⑥金融機関での信託口口座開設手続きをする。
⑦信託口口座の開設後、資金を移動します。
近くに信託口座を開設に対応してくれる金融機関がない場合には、受託者名義の通常の預金口座を新たに解説し、信託された金銭を管理することで、分別管理の義務を果たします。
①誰でも簡単にできるわけでもない。
②受託者を単独にする。
②開設までに半年かかるケースもある。
信託法第163条
①信託の目的を達成したとき、または目的を達成できなくなったとき。
②受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
③受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。
④受託者が財産管理に要する費用の償還等を信託財産から受けられないことにより信託を終了させたとき。
⑤信託が併合(2つ以上の信託の信託財産を1つの信託財産とすること)されたとき。
⑥信託を終了することを命ずる裁判があったとき。
⑦信託財産について破産手続きの開始決定があったとき。
⑧委託者が破産手続き開始の決定、再生手続開始の決定または更生手続き開始の決定を受けた場合で、一定の法律の規定により信託契約の解除がされたとき。
⑨信託行為において定めた事由が生じたとき。
【登録免許税】
信託終了に伴って権利を移転する場合、原則として2%(土地については、令和3年3月31日まで1.5%)課せられます。
ただし、受託者から当初の委託者兼受益者へ財産を戻す場合は非課税です。
信託の抹消は、不動産1個につき1000円です。
家族信託は、家族や親族に財産を託すということがポイントで、高額な費用が発生しないのが特徴です。
費用の一般的な相場は、以下の通りです。
・信託財産に不動産がない場合:30~70万円以上
・信託財産に不動産がある場合:50~100万円以上
【主な費用】
①信託の設計及びコンサルト報酬
家族信託は各家庭の事情に応じて設計できる点が特徴です。専門家と相談をしながら信託の内容を設計します。
費用相場は、信託財産の評価額が1億円以下の部分は、信託財産の1%(最低額30万円)で、1億円以上3億円以下の部分は0.5%です。
②信託契約書の作成および公正証書の作成費用
信託の契約内容を公正証書にする費用です。①の費用に含まれていることもあります。
公正証書にするための実費については、信託財産の金額に応じて3~10万円程度目安です。(日本公証人連合会)
公正証書作成のサポート費用の目安は、10~15万円です。
信託化する財産の評価額で増減します。
③信託登記にかかる登録免許税
信託登記に必要な登録免許税は、信託財産の固定資産税評価額を基準として土地0.3%、建物0.4%です。
司法書士への登記依頼費用の相場は、8~12万円です。
④受益者代理人、信託監督人への報酬
月額1万円くらいが相場です。
⑤その他実費
戸籍謄本や登記事項証明書など、家族関係や信託財産について調査するために実費が必要になります。
家族信託では、初期費用が発生する代わりに、信託が始まってからは、基本的に、新たな定額費用が発生しないことが特徴です。
ただし、家族信託の運用開始後に修正・変更を加えるときやトラブルが生じたときに専門家のサポートを受けると費用が生じます。